闘い終えて、日が暮れて。

イベントを開催するのはとても楽しいのだが、終わるとものすごい疲労感に襲われる。虚脱感と言ってもいい。
同じ企画で3回目ともなれば、慣れも出てきて余裕はある。ただ、なぜか仕事量が増えている気がする。細かい点
まで気がついてしまうからかもしれない。

 

とりあえず『第三回蔵元と語らう小樽の会』は終わった。
チケット枚数を昨年より減らしたこともあって、発売から2週間もしないうちに完売という嬉しい悲鳴も上げた。
(当ブログに掲載するタイミングもないほどに、猛烈に売れた。)
伊勢鮨が会場内で鮨を握って提供したり、テーブルに残った酒をオークションしたりといった新しい内容も好評で、参加者からはお褒めの言葉をいただいたが、このままでいいのかという気持ちもある。


そもそも、この企画は、ブームで雑誌に取り上げられている軽薄な日本酒ではなく、本当に旨い日本酒を知って欲し
いという思いと、本物の日本酒を提供し続けている居酒屋が、ここにあることを知って貰いたいという思いで始めた
ことであった。
個人的には、酔えばいいだけの安酒と薄利多売で、既存の飲食店を低品質・低価格競争に巻き込む大手居酒屋に、物
申したい気持ちもあった。もちろん、そんなものは《蟷螂の斧(とうろうのおの)》である。


わか松のマスター曰く「これだけの酒を揃えていても、お客さんが来てくれなければ空しいだけだ」。その空しさを
自分たちの胸の痛みにしたいと思った。一度失ったら、二度と取り返せないものがあることなど、この古い町に住ん
でいる自分たちには、何度も経験のあることではなかったか。


『蔵元と語らう小樽の会』の出席者の、幸福そうな赤ら顔を見ながら、このうちの何人かでも、普通の暮らしの中の
普通の楽しみとして、わか松に足を運んでくれたらなぁと考えていた。この酒が、この値段でいいの? というくら
いの入手困難酒が、さりげなく置かれているのに。それが、どんなに有難いことであるか、知って欲しい。


何はともあれ、闘い終えて日が暮れて。
花園町に、提灯の明かりが灯り始めれば、フラフラと飲み屋の小路に紛れ込むだけの酔っぱらいの戯言ではある。
                                                 (お)

 

 

 

2016年11月21日